2019年、自分は損切りのルールを「今回だけ」と無視して、口座資金の4割を失った。決めていた条件を、自分で外した。その失敗から資金管理を作り直すとき、損切りを価格だけの話で終わらせないことを軸にした。
どこまで下がったら売るか。その問いだけでは、失う金額は決まらない。同じ値幅でも、持つ数量で損失は変わる。損切りの目安は、撤退する価格と、資金から引き受ける金額をつないで考える。きみなら、注文前にその両方を説明できるか?
その目安は、値幅なのか、資金の割合なのか?
まず、三つの数字を分ける。値幅は、エントリー価格と損切り条件を置く価格の距離。資金比率は、運用資金のうち今回の損失に割り当てる割合。許容損失額は、その割合を金額に直したものだ。
「何%で切るか」と書くだけでは、価格の下落率なのか、口座資金に対する損失率なのかが曖昧になる。ノートには分母まで書く。ここを混ぜると、価格の条件を決めたつもりで、資金への影響を見落とす。
CME Groupのポジションサイズ解説は、損切り位置と、口座資金に対して許容する損失の割合または金額を、数量の判断に使っている。同資料には新規取引者向けに1〜3%という目安もあるが、全員に共通する基準ではない。
自分なら、その割合をそのまま借りる前に「金額にしても引き受けられるか」と問う。比率から考えにくければ、許容できる金額を先に置き、運用資金に対する割合を確かめる方法もある。
値幅と許容損失を、どう数量につなぐか?
損切り価格は、許容損失額に合わせて無作為に近づけるものではない。取引の見立てが崩れる水準を考え、通常の値動きですぐに触れそうな位置ではないかを点検する。そのうえで、値幅に合わせて数量を調整する。
ここからは、手数料などを除いた仮の買い取引で考える。運用資金は100万円、今回の許容損失はその0.5%、想定買値は1株2,000円、損切り条件を置く価格は1,900円とする。0.5%も価格も、計算のための設定だ。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 許容損失額 | 運用資金 × 許容比率 | 5,000円 |
| 1株当たりの想定損失 | 想定買値 − 損切り価格 | 100円 |
| 概算数量 | 許容損失額 ÷ 1株当たりの想定損失 | 50株 |
この数量は、指定した価格で決済できた場合の概算だ。手数料や約定価格のずれを含む余裕は入っていない。許容損失額を全部使う数量でよいか、費用分を残して減らすか。そこまで考えて、注文する数量を決める。
見立てに合う損切り位置が遠いなら、同じ許容損失額で持てる数量は小さくなる。持ちたい数量を先に固定して、損切り価格だけを都合よく動かしていないか?
逆指値を置けば、損失額は固定できるか?
計算どおりの損失で終わるとは限らない。発動後に成行注文となるストップ注文では、急変時の約定価格が指定水準から離れる可能性がある。FINRAのストップ注文の解説も、指定価格と約定価格の違いを説明している。
価格条件を付けるストップリミット注文には、約定しない可能性がある。価格を優先する条件と、決済の成立は分けて考えたい。ノートの許容損失額は判断の基準であって、実際の損失上限を保証する数字ではない。
きみの注文前のノートには、何を残すか?
次の五行は、自分が判断条件を整理するために提案する記録欄だ。公的な統一様式ではない。注文を出す前に、空欄を一つずつ埋めてみる。
- 運用資金の残高、今回使う許容比率、許容損失額を書く。
- エントリーの想定価格を書く。
- 損切り価格と、その水準で見立てが崩れる理由を書く。
- 1単位当たりの想定損失を計算し、注文数量を書く。
- 手数料や約定価格のずれを考慮し、数量を減らすか、取引を見送るかを記す。
迷ったら、損切り価格を動かす前に、数量を減らした案と見送る案を並べる。許容損失額を超えてまで、その数量を持ちたい理由は何か。答えが価格の回復への期待だけなら、注文の条件をもう一度読み直す。
記録を表で管理したいなら、スプレッドシートに損失条件と判断を残す方法も使える。器より先に、注文前の数字と理由を残したい。
自分のノートに置く一行は、これだ。「損切り価格だけで終わらせず、その数量で失う金額まで書く」。


