2019年、自分は損切りルールを「今回だけ」と無視して、口座の資金の4割を失った。決めた線を自分で動かした失敗だ。株のナンピンを考えるときも、この経験から問い直したい。買値を下げたい気持ちと、追加の損失を引き受ける判断は、分けられているか。
平均取得単価だけを見ると、買い増しは状況を改善するように見える。だが、投入する資金と保有株数も変わる。今回は、その三つを並べて考える。
平均取得単価が下がれば、安心できるか?
ナンピンとは、値下がりした保有株を買い増し、平均取得単価を下げる方法だ。松井証券の解説にある計算方法は、取得金額の合計を合計株数で割るもの。購入ごとの株数が違えば、二つの単価を足して半分にするだけでは求められない。
ここからは仕組みを見るための仮の数字だ。1,000円で100株を買い、800円に下がったところで100株を追加する。手数料・税金は含めず、現金で購入する例として考える。
- 追加資金:800円×100株=80,000円
- 投資総額:当初の取得金額+追加資金=180,000円
- 保有株数:100株+100株=200株
- 平均取得単価:投資総額÷保有株数=900円
損益分岐となる株価は下がる。ただし、買い増した瞬間に既存の含み損が消えるわけではない。平均単価の改善と、損失の解消は別の変化だ。
700円まで下がったら、どちらが重いか?
追加後に株価が700円へ下落した場面を比べる。買い増しを見送った場合も、同じ株価で計算する。

| 選択 | 追加資金 | 含み損 |
|---|---|---|
| 買い増さない | 0円 | 30,000円 |
| 800円で100株追加 | 80,000円 | 40,000円 |
買い増した場合の評価額は140,000円。平均取得単価は低くなったのに、含み損は買い増さない場合より10,000円大きい。追加した株も値下がりするからだ。SMBC日興証券の用語集も、下落が続く場面では損失がさらに大きくなり得ると説明している。
追加注文の前に、何を固定するか?
自分なら、平均取得単価を計算するだけで注文を決めない。まず追加資金の上限を書く。次に買い増す価格と株数を置く。最後に、さらに下がった場合の損失額を計算し、買い増しをやめる条件と撤退する条件を書き分ける。
資金を出せることと、失って耐えられることも別だ。金融庁の金融ガイドは、リスク許容度をどこまでの損失に耐えられるかと説明し、生活資金とは別の余裕資金で投資する考え方を示している。条件の書き方を整理するなら、損失上限と注文前の確認をまとめた損切りルールも判断の材料になる。
きみは何を基準に選ぶか?
買い増さなければ、平均取得単価は下がらない。買い増せば損益分岐は下がるが、追加資金を使い、下落時の損失額も増え得る。きみがその注文で引き受けようとしているのは、いくらまでの損失だろうか?
